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◆本橋 成一◆

 ぼくがはじめてチェルノブイリに行ったのは、事故から5年を経た1991年の6月のことだ。それまでぼくは、悲惨なニュースを嫌というほど見せられ、聞かされたこのチェルノブイリをそして「核」という途方も無いテーマを、いまさら僕になにができるだろうと思っていた。
 案の定、白血病や甲状腺機能障害で病む子どもたちに出会ったとき、写真などとても撮れるものではないと思った。放射能測定機が激しくなる石棺の前に立ったときも、二度と来たくないと思った。そんな気持ちが一変したのは、この写真の主な舞台になっているチェチェルスクに行ったときだ。僕の目には、自然と共にたくましく生きる人々や生き物の姿が、焼き付いて離れなかった。そして、チェチェルスクを歩くほどに、ぼくの中にあった「核の大地」のイメージが「いのちの大地」に変わっていった。

プロフィール
1940年 東京生まれ。
1962年 自由学園卒業。
1965年 東京総合写真専門学校卒業。
1968年 炭鉱をテーマにした作品で第五回太陽賞受賞。
1995年 チェルノブイリの風下に生きる人々の暮らしを追った「無限抱擁」で日本写真協会年度賞、写真の会受賞。
1997年 「ナージャの村」初監督する。
ベルリン映画祭正式招待、ドイツ環境映像祭。
ハワイ国際映画祭グランプリ受賞、他。
97年度文化庁優秀映画作品賞受賞。
  写真「ナージャの村」で第17回土門拳賞受賞。
2002年 映画「アレクセイと泉」ベルリン映画祭で「ベルリナー新聞賞、」「国際シネクラブ賞」受賞
<著書> 「炭鉱<ヤマ>」「上野駅の幕間」(共に現代書館)「サーカスの時間」(筑摩書房)、「無限抱擁」(リトル・モア)、「ナージャの村」、「イラクの小さな橋を渡って」などがある。

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